ヨシタカに関するつぶやき

「ヨシタカが好きだよ」真剣な眼差しで言われ、少しびっくりした。「どうしたいきなり？」「いきなりじゃない、オレはずっとヨシタカが好きだ」迷いなんて微塵もない表情に森山は思わず吹き出した。「変なやつだな。オレだってお前が好きだよ」ずっと。内緒話みたいに囁いて幸せだなと笑った。

猫がじゃれつくように身体を擦り寄せてくる森山に氷室は問いかける。「どうしたの、ヨシタカ？」雑誌を置いて頭を撫でてやると嬉しげに身体を密着させてきた。「久しぶりなんだ、構え」命令口調に思わず苦笑がもれる。それが気にくわなかったのか口を塞がれた。柑橘系の香りがふわり、香った。

「やっぱり、お前は何をしてもイケメンだな」ガムテープで乱雑に拘束された腕に塞がれた唇。困って笑い返せば、ますます満足そうにヨシタカはオレの頬を撫でた。突然顔を掴まれ、ガムテープ越しに口づけられれば物足りなさに喉が鳴る。「どうして欲しいか言ってみろ」ああ、なんて無茶苦茶な。

はじめてだと言ったらおまえは笑ったのだろうか。「ヨシタカのことが好きなんだ」告白なんて、好きだなんて、女の子に言うばかりで言われたことなんて。そんな苦しそうな顔で、泣き出しそうな顔で、掴んだ手なんか震えてるじゃないか。「ヨシタカはオレがキライ？」ああ、もう！これだからイケメンは。

「もう朝だよ」ピクリとも動かずベッドに横たわる姿はさながら眠り姫のよう。そんな、ワガママな恋人に目覚めのキスを贈れば魔法が解けて、きっと。願ったところで冷たい皮膚に弾力はなく。厭な臭いが口腔を満たしただけ。「ヨシタカはしょうがないなぁ」どうして？茨なんて何処にもないのに。

「氷室」名前を呼べば、当たり前みたいに振りかえる。どうしたの、ヨシタカ？薄い唇が動いて溢れる言葉は特別で、オレだけのもの。他人に聴かせるのがもったいなくて呑み込むみたいに唇をあわせた。淋しくなっちゃった？ 悪戯っぽく囁かれた言葉に頷く。ああ、お前に恋したあの日から、ずっと。